RESEARCH 研究

課題1A

安全・安心社会のための日本域4次元高機能気象データの整備

日本で圧倒的に足りない地域気象データを
気候変動時代の社会設計に活かす基盤データとして整備する

地球温暖化の進行に伴い気象関連災害は世界的に甚大化しています。日本においても2018年の西日本豪雨や2020年7月豪雨、2019年台風19号が各地に甚大な被害をもたらしました。また、猛暑年の熱中症犠牲者は豪雨犠牲者の数倍にも達します。今後さらに激甚化する気象関連災害のリスクに備え、将来の安全・安心な社会の設計に不可欠なのが地域特性を反映した過去の気象データですが、日本ではまだ整備されていません。

数値天気予報モデルへの直近の観測データの取込み(同化)は日々行われ、3次元大気状態の最適推定値とも言える「解析データ」が常時作られています。ただ、予報精度の向上にモデルが常に改良されるため、解析データが表す変化がモデル改良によるものか、地球温暖化に伴うものか区別できません。そこで、予報システムを最新版に固定し、蓄積されてきた観測データをそれに逐次同化し直すことで、過去の大気状態を矛盾なく4次元的に再現するのが「再解析」です。気象庁は全球大気の再解析に長年取組み、2022年には3代目の全球大気再解析データ「JRA-3Q」を公開しました。品質は世界水準ですが、水平解像度40km・6時間毎のデータでは地域気象の表現にはまだ不十分です。

本プロジェクトでは気象庁と共同し、日々の降水予報などを担う最新の領域大気予報・同化システムを東京大学の最新のスーパーコンピュータに移植し、 JRA-3Qデータを境界条件に、水平解像度5km・1時間毎の「日本域領域気象再解析(RRJ-ClimCORE)」データを作成して、複雑な地形に影響される各地の大気状態を過去20余年にわたり4次元的に再現します。衛星観測データに加え、レーダーと雨量計の観測値を融合した「解析雨量」を水平解像度1kmで長期再計算して同化し、線状降水帯や台風など極端現象の表現を格段に向上させることで、先行する欧州の領域大気再解析との差別化を図ります。

日本域気象再解析の概念とデータ処理の流れ

日本域気象再解析の概念とデータ処理の流れ

RRJ-ClimCOREについて

RRJ-ClimCOREは日々の予測情報を最大限に活かすための参照データとして社会で広く利活用できます。深層学習(AI)用教師データが周辺の海上も含めて格段に拡充され、再生可能エネルギーや農業等の分野でシステム設計の高度化に貢献するほか、過去の災害事例の再予報等に基づく気象災害リスク調査などにも活用され、将来の地域気候シナリオの高度化や日本域の水文・海洋再解析にも貢献できます。

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