データジャケットを用いた「知の用水路」の構築
知の用水路: 多様な研究者、事業者、一般ユーザの知識コミュニケーションによる価値共創の場づくり
本拠点では全体として高解像度の気象データをコアに据え、多様な研究者と事業者、施政者が会して新たな学術的・経済的・社会的価値を共創することをめざしています。本研究課題では、どの人にとっても、自ら価値を創造するために必要な情報の受発信と可能とするような情報システム「知の用水路」の構築を目指しています。
その方法として、2013年に研究課題リーダーの大澤が2013年に考案した「データについて、ユーザやデータ所有者の主観的な期待を盛り込んだメタデータ」であるデータジャケット(DJ)を、データの対象世界についてのモデル、およびそのさらに背景にある社会や自然の多様なシナリオを盛り込んで拡張した「データリーフ(DL)」に発展させ、データ利用価値共創のための情報システムを構築しています。
当初は、多様なデータの保持者やユーザが出し合ったDJ間の結合可能性をKeyGraphにより可視化し、データ利活用シナリオを創発するIMDJというワークショップを実施していましたが、その後、様々な参加者が自由な視点から捉えたデータ利用価値を伝え合うフォーラムの実現を目指して本研究を開始しました。2022年頃から新進気鋭の研究メンバーを拡充し、様々なデータの組み合わせから得られる知のイメージを表現する手法Feature Concept(FC)、一つのデータセットのFCに相当するDLを結合するアプローチを講演し、これを実現するdFrome, BaleeGraph等の技術開発および近年発展するLLMを統合し、一般ユーザからの参加を可能とするシステムへと拡充しつつあります。
これまでの成果のうち、具体的なデータ利活用事例として、「雨量の変化が、統計的な手法で見いだせないようなCOVID-19感染拡大の引き金を生み出す」「人流方向の多様性が感染症拡大に影響し、かつ、賑わいの指標として有用である」等の顕著な傾向の発見や、年間の気象変化とともに起きる電力量、料理(おでんなど)の消費度合いの変遷、各地における熊の出没頻度の変化等を分析するなどの結果を得ており、今後も、現代社会における気象データの潜在的有用性をAI研究者の視点から発信してゆきます。
