データジャケットを用いた「知の用水路」の構築
多様な研究者、事業者、施政者の噛みあう価値共創の場づくり
~気象再解析データを一つのコアとして~
古くから、多様な人が集い、その総和(参加者の人の知識や発言を併せただけの情報)を超える価値を有する情報を得るような環境を生み出すこと共創と称し、その環境を共創の場と呼んできました。ここでの環境とは、オフィスにおける椅子や机の配置を表すこともありますが、本研究課題では、どの人にとっても、自ら価値を創造するために必要な情報の受発信と可能とするような情報システム「知の用水路」の構築を指しています。
本拠点では全体として高解像度の気象データをコアに据え、多様な研究者と事業者、施政者が会して新たな学術的・経済的・社会的価値を共創することをめざしています。この中で本研究課題では、2013年に研究課題リーダーの大澤が発明した「データについて、ユーザやデータ所有者の主観的な期待を盛り込んだメタデータ」であるデータジャケット(DJ)を用い、データ利用価値共創のための情報システムを構築しています。当初は、多様なデータの保持者やユーザが出し合ったDJ間の結合可能性をKeyGraphにより可視化したマップを模造紙に印刷し、データ利活用シナリオを創発するIMDJという対面ワークショップを実施していましたが、コロナ禍もあり、オンラインのIMDJシステムを多様な業界に提供するようになりました。これを発展させる形で、様々な参加者が自由な視点から捉えたデータ利用価値を伝え合うコミュニケーションサイトDJ-SNS(図参照)の構築を起点として本研究を開始しました。2021年には、データから得られる知の多様な形態を表現する手法Feature Concept(FC)、個別の技術を社会的価値に結びつけるツールdFromeをシステムに連結する研究も実施中です。
成果の一部の例として、「雨量の変化が、統計的な手法で見いだせないようなCOVID-19感染拡大の引き金を生み出す」という発見や、地域ごとの気候変化の関係を可視化する「気象時計」なるビジネス支援ツールの開発を行い、気象データの価値を掘り起こすことができました。