RESEARCH 研究

課題3

激化する気候変動に対応できる農林水産業

地域気象・気候ビッグデータで気候危機に立ち向かう日本の農業

地球温暖化による高温や極端降雨により、農業への影響が大きくなっています。日本のコメ生産は現在なお地域の基幹産業であり、収量の減少や白未熟粒などによるコメ品質(一等米比率)の低下は、農家の収入減につながり、地域経済にも影響します。またコメ生産は温暖地から寒冷地までほぼ全国で行われていることから、その影響も地域により異なります。温暖な九州・四国地方では、高温の影響はますます深刻になっているほか、これまで冷害に苦しめられてきた北日本でも、一足飛びに高温への対応が必要な時代に入ってきました。また、気候の変化による病虫害の多発も懸念されています。在来の害虫は温度上昇で越冬が可能になり世代交代も活発化することで、作物により大きなダメージを与えているほか、越境飛来する害虫も増大しています。さらに病害で、これまで冷害時に多く発生していたイネいもち病は、温度上昇により全般的には減っているものの、発生の時期や地域が複雑化し予察が難しくなった、との指摘があります。  現在、日本の農業現場での気象情報の有効活用ツールとして、私たちが開発した「メッシュ農業気象データ」を使っていただいております。このシステムは、過去から現在の気象データに加えおよそ一か月先までの気象予報データを、東西南北1kmの単位で提供するもので、多数の気象要素を持ちサンプルプログラムを装備していることから、生産者団体や篤農家さんに喜ばれております。本プロジェクトで行われる日本域再解析データにより、気象場の物理関係や詳細な地形・土地利用を反映したより高精度のメッシュデータへの更新が可能となり、生産現場での有効性が増すことが期待されます。また現在の「メッシュ農業気象データ」システム上には、国際的に認められた将来気候予測に準拠した、同じく空間1kmで2100年までの将来シナリオも装備していますが、これについても日本域再解析データを用いて高精度化し、また降積雪や土壌水分など、農業利用に必要な要素をさらに追加することが可能になります。

日本各地における農業への被害・影響とその適応策

コメ白未熟粒について

白未熟粒は、コメ粒へのデンプン蓄積が不十分なために白く濁って見える状態であり、これが多くなると等級低下の原因になります。登熟期間の高温や低日照で発生が多くなることがわかっているため、農研機構では出穂後20日間の平均気温26°C以上の積算値から白未熟粒率を推定する方法を開発しています。

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